リードオルガン修理の広場

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修理の前に 楽器の問題点を知る①

今年の夏はストップ付きオルガンの修理を始めます。
大正時代のヤマハオルガンです。立派な彫刻が頭についたオルガンです。
修理の前にこのオルガンの現在の状態を知らなくてはなりません。そこから、どのような修理をしていくかを考えていきます。
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まず、オルガンの前に座ってすることは音持ちを調べることです。基本の8フィートのストップを引っ張ります。
この場合は①Melodiaです。ペダルを踏んで後ろ側の大袋のバルブがシュッ!シュッ!と音がするまで大袋の空気をかき出します。
これはもう大袋がこれ以上縮まないよ!というサインです。そこでペダルから足を離し、同時にドの音を鳴らします。
音が出なくなるまでの秒数を計ります。

このオルガンは9秒でした。この規模のオルガンでしたら最低でも25秒は欲しいところです。
この音持ちが短いということはいろいろな部分から空気が抜けてしまっているということです。

今迄見たことがある音持ちの良いオルガンは、49鍵のオルガンでも30秒、7個ストップのもので45秒のものがありました。
袋貼りやパッキンの部分をいかに気密性を良くするかで結果が決まってきます。 

次に大きな問題がありました。
このオルガンは教会で使われていましたが、修理をした後に弾きにくくなってしまっていずれ誰も弾かなくなってしまったとのこと。
ペダルを踏むとき、なぜか渾身の力を込めて踏まなくてはならない程硬く重いのです。
これでは、年配の方などは腰を痛めてしまい到底演奏などできません。
なぜ、こんなに重いのでしょうか?

「オルガンは外国人用だから重いのです。」とおっしゃる方もいらっしゃいましたが、とんでもない!!!137.png
外国のオルガンだってこんなに硬くはありません。

小袋のバネを調べてみると、あれ?大正時代の古いオルガンなのになぜかバネがピカピカ177.png177.png
そうか!修理をした方がバネが折れたか何かでバネを変えてしまったのです。それも、大袋用の太いバネに…。143.png
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左の太いバネが実際に小袋に使われていたもの(実際は大袋用)
右は通常の小袋用のバネ(これだけ太さが違います。)
これでは、親の仇とばかりに踏まなくてはなりませんね。

なぜ、このようなことが起こってしまったのでしょうか?
この楽器を修理してくださった方は、おそらくオルガンの修理を善意でしてくださったのだと思います。
教会のご婦人方が弾かれるのを知っていて、わざとこの大きなバネを小袋に取り付けたとしたらそれは本当に意地悪としか言いようがありません。それなのに、善意で行っているのになぜこの悲劇が生まれてしまったのでしょうか?
その理由はただひとつ。
修理をした方にオルガンの演奏体験がないからなのです。

それは楽譜を読んで上手に演奏できるべきということではなく、まずオルガンの椅子に座ってみる、ペダルを踏んでみる、踏みながらスウェルを動かしてみる、フルオルガンのニースウェルを動かしてみる、鍵盤を単音で弾いてみる、和音で弾いてみる、弾きながらストップを出してみる…、という行動をまずしてみることがとてもとても大切なのです。
どこの動きをスムーズにしたらいいのか、和音で弾くとどれだけ空気が抜けていくのか、足の踏み具合、鍵盤の深さを体で体験してみてください。
それさえしてくれていたら、このオルガンがお蔵入りすることは無かったはずです。
善意の修理が仇となることは無かったはずです。

修理をする人はまず、オルガンを弾いてみよう、音を出してみようということは修理の鉄則です。

  


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by kazenokoto | 2017-08-16 23:51 | ヤマハオルガン11ストップ(大正時代) | Comments(0)