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リードオルガン修理の広場

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解体④ リード蓋 (2) Clarabella, Dulcianaの吸入バルブ


Melodia, Diapasonと共通のリードを使って鳴らす、Clarabella, Dulcianaのストップはリード蓋の開け方を変えることで音色に変化を与えています。
これらの、リード蓋は上側が開くようになっています。

解体④ リード蓋  (2) Clarabella, Dulcianaの吸入バルブ_e0197734_19310826.jpg
この部分は修理されていなかったのでオリジナルの形を保っています。

このリード蓋の吸入バルブは駒タイプのものではなく、弁が裏側についています。
解体④ リード蓋  (2) Clarabella, Dulcianaの吸入バルブ_e0197734_19342591.jpg
この弁は、リード蓋を閉めると棒が押されて開くようになっています。

図をご覧ください。
解体④ リード蓋  (2) Clarabella, Dulcianaの吸入バルブ_e0197734_19360539.jpg
このオルガンには6カ所バルブがついていますがDiapason(Dulciana)の下の音域にはついていませんでした。
おそらくこの音域のリードはとても太く、長くなっているのでちょっとした空気漏れでは空鳴りすることがないので必要がなかったのだと思います。

バルブの位置を図にしてみました。

解体④ リード蓋  (2) Clarabella, Dulcianaの吸入バルブ_e0197734_19391872.jpg

それでは、リード蓋周りの修理をまとめてみます。

①リード蓋の皮の張替
②バネの交換
③吸入バルブ駒の取り換え(5か所)




# by kazenokoto | 2018-08-19 19:50 | ヤマハオルガン11ストップ(大正時代)

解体③ リード蓋 (1) リード室にある吸入バルブについて

問題はリード蓋の部分です。音漏れする箇所がいくつかありました。

大正時代あたりのオルガンに多く見られるのですが、リード室の横にバルブとなる駒があります。
解体③ リード蓋 (1) リード室にある吸入バルブについて_e0197734_23555448.jpg
   
これは、ストップを引っ込めた時に音漏れを防止するためにリード室内全体を真空にする装置なので取らないようにしてください。

他の楽器で最初に見た時は何だろう?とわからなかったのですが、ようやくどのような役目をするのかわかってきました。

図をご覧ください。      
解体③ リード蓋 (1) リード室にある吸入バルブについて_e0197734_00020188.jpg
解体③ リード蓋 (1) リード室にある吸入バルブについて_e0197734_00023786.jpg
リード室全体が真空になると、空気の流れによって引き込まれていきますので蓋のしまりも強まっていきます。
そのために音漏れを防止するという機構ですが、少し複雑なのでその後廃止され、リード室の形状をリード蓋にピタッとあてる形状にして真空の密度を保つようになったようです。

外国の楽器ではメイソン アンド ハムリンという会社がこの形式を取ったものがあるようで、pneumatic あるいは suction valveと呼ばれていたようです。(仮に吸入バルブと呼びます。)

このオルガンでは3か所、この吸入バルブの駒がとられてガムテープが貼られていました。
しかし、リード室の形状がこの機構用で、リード室とピタッとあてる形状ではないので絶対にこのバルブを利用しないと空気が駄々洩れしてしまいます。

解体③ リード蓋 (1) リード室にある吸入バルブについて_e0197734_00184509.jpg
                  バルブが取られてガムテープが貼られている。

ということで、三角コーナーも取られてしまってリード蓋を直接リード室にあてて修理をしてみたものの形状が合わないために隙間から空気が漏れてしまいます。149.png


 
解体③ リード蓋 (1) リード室にある吸入バルブについて_e0197734_00212404.jpg
                    すき間が出来てしまっている。

当然、音漏れがするので仕方がなくリード蓋に皮が足されています。134.png

解体③ リード蓋 (1) リード室にある吸入バルブについて_e0197734_00232372.jpg
また、リード蓋の内側の箇所に金具ヒンジが取り付けられてしまっています。
                 
解体③ リード蓋 (1) リード室にある吸入バルブについて_e0197734_00304721.jpg
これもオリジナルではないので取り外して、削られた部分を補修します。

また、外したリード蓋はどこがどこだかわからなくなってしまうので、必ず印をつけておきます。
教えていただいた方法は、必ず演奏する正面から見て右側をR,左側をLとして、手前からR1,R2,R3,R4と印をつけていきます。
Lも同じです。
自分でわかりやすいように、他の方法でも構いません。

取り外した金具もどのパーツのものかわかるように印を必ずつけましょう。

解体③ リード蓋 (1) リード室にある吸入バルブについて_e0197734_00354450.jpg
                  

# by kazenokoto | 2018-08-19 00:40 | ヤマハオルガン11ストップ(大正時代)

解体② 共鳴箱 大袋・小袋



さらに解体を進めていきます。

まず、共鳴箱を外して裏返して見ると10か所の割れがあったようでゴム布で貼られています。

共鳴箱にゴム布を貼ってしまうと音の響きに影響するので、埋木をして修理します。

解体②   共鳴箱 大袋・小袋_e0197734_15093407.jpg
パレットバルブの部分の割れは綺麗に埋木されて修理されていました。

解体②   共鳴箱 大袋・小袋_e0197734_15111321.jpg
共鳴箱を外した状態で大袋、小袋の空気持ちの状態を調べます。

丸い穴が開いている部分が大袋につながる空気穴なので、これをテープでふさいで調べます。

解体②   共鳴箱 大袋・小袋_e0197734_15234125.jpg
解体②   共鳴箱 大袋・小袋_e0197734_15241761.jpg
穴をテープでふさいだ状態。そして、ペダルを踏んで大袋がシュー、シューと音がするまで踏み込みます。音がしたということは大袋の真空状態がいっぱいという印ですので、足を離し、大袋が戻り切る時間を計ります。1分7秒でした。この大きさのオルガンだと5分くらいは欲しいです。見た目は綺麗に袋が貼られていますが、やはり袋の張替も必要なようです。

解体②   共鳴箱 大袋・小袋_e0197734_12404379.png

                 大袋が完全に広がるまでの時間を計ります。
              (このオルガンは1分7秒。スー、ス―と空気漏れの音もします。)

解体②   共鳴箱 大袋・小袋_e0197734_16224646.jpg
パレットバルブを外しました。そんなに劣化していませんでしたが、汚れもあるのでこの際、張り替えることにします。




ここまでで、修理する箇所をまとめます。
①大袋、小袋の張替
②共鳴箱割れの部分の埋木修理
③パレットバルブの張替











# by kazenokoto | 2018-08-12 16:20 | ヤマハオルガン11ストップ(大正時代)

解体①

解体をしていくといろいろな事がわかってきます。

まず鍵盤回りですが、鍵盤横の板を外すとあっさり鍵盤の深さが正常に…。

組み立ての時点でバランスが崩れて鍵盤が浅くなってしまったようです。

返すがえすも、出来上がった時点で一度弾いてみてくれれば!と思うばかりです。
解体①_e0197734_22130916.jpg
【正常な位置に戻った鍵盤】

この時点で、鍵盤の下がり具合も調べておきましょう。

一つ一つの鍵盤を弾いてみると降り方がキシキシと渋い箇所やカチカチと音がする箇所があります。

これはピットマンにひっかかりがある、或は共鳴箱内部のパレットバルブを押えるバネが原因の場合があります。

組み立ててからでは2度手間になりますので、今のうちに調べてチェックしておき解体した時にしっかり調整しておきます。

左から、1、2、3、7、12、13、15番目の鍵盤と右から14番目の鍵盤にキシキシ音がします。
また、右から8番目の鍵盤にカチカチ音があります。

解体するときは、必ず写真それぞれの段階で写真を撮っておきましょう。

すぐに元に戻せるのなら記憶を頼りに出来ますが、修理が長引いたり、忙しくてなかなか修理が出来ないと3カ月~4か月とほったらかしになってしまう場合もあります。その時、写真が非常に参考になります。

また、メモなども有効です。

鍵盤を外した後から記録します。

ピットマンガイドを外す→ピットマンを外す→カプラーボードを外す→フルオルガンピンを外す→ストップ連結を外す→スウェルボックスを外す…、等々です。組み立ては反対に戻っていきます。

ストップ連結では、新しいものが作られている箇所がありました。とてもきれいに作られています。
解体①_e0197734_22363157.jpg
こういうものは得意な人だったのだろうなあ…と思ったりします。






# by kazenokoto | 2017-08-23 22:45 | ヤマハオルガン11ストップ(大正時代)

修理の前に 楽器の問題点を知る②

次の問題点は鳴りっぱなしです。
ストップを出していないのに鍵盤を押すと音が出てしまいます。

音が出てしまう音は、
上半分のCeleste全部と下半分のAeolian Harp全部、またViola4フィートの11か所 です。

ストップを出していないのに音が出てしまうということは、音がストップされていないということです。
リードの蓋の閉まり方が甘いために息が漏れてしまいます。

また、なぜか鍵盤がとても浅く弾きにくく、音もしっかり鳴りません。一番上の鍵盤は戻りが悪いです。
修理の前に 楽器の問題点を知る②_e0197734_16241486.jpg
鍵盤下に2枚フェルトが敷いてありますが、これが高すぎるのかな?

また、フルオルガンも機能せずニーレバーが外れてしまっています。
修理の前に 楽器の問題点を知る②_e0197734_16262171.jpg
連結棒がだらんとしてしまっています。

また、ペダルを踏んだだけでヒューヒューと息漏れの音がします。

ということでこのオルガンの問題点をまとめると次のようになります。

①小袋のバネが大きすぎる。
②リード蓋が閉まりきらず、鳴りっぱなしがある。
③ペダルを踏むと息漏れの音がする。音持ちは9秒と短すぎる。
④鍵盤が浅く弾きにくく、音もしっかり出ない。

これらの点を改善しながら修理をしていきます。出来るかな~?!140.png
とにかく目の前にある課題を一つずつ解決しながら進んでいきます。












# by kazenokoto | 2017-08-17 16:35 | ヤマハオルガン11ストップ(大正時代)